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急性中耳炎

耳の機能と構造』も参考にしてください

〈どんな病気でしょう?〉

中耳(鼓膜の奥)に細菌が入って炎症を起こします。中耳に膿がたまり、鼓膜がパンパンに脹れます。2〜3歳くらいまでは、頻回に繰り返す反復性中耳炎が多く見られます。

急性中耳炎 正常鼓膜
右鼓膜 左鼓膜
鼓膜の奥(鼓室)に膿がたまっています。3時の位置に水平な線が見えますが、液面(膿)が透見されています。6時の位置に水泡形成が見られます。水疱はでき始め(大きくなる時)が最も痛く、転げまわって痛がる子も少なくありません。 正常です。
半透明な膜(鼓膜)を通して鼓室が透見されます。何もたまっていないので奥の骨壁がうつっています。

〈どんな症状がでるでしょうか?〉

耳痛が主な症状ですが、乳幼児は痛いと言えないことが多いので、耳に手をやる・泣いて寝ない・首を振る・とりあえず不機嫌など症状がでます。熱が出ることもあります。耳漏(みみだれ)で気づくこともあります。

〈原因は?〉

最大の原因はカゼです。急性中耳炎は上気道(鼻・ノド)の炎症やカゼの後に発症します。つまり鼻やノドの細菌が耳管(鼻と中耳をつなぐ管)を通って中耳に入り中耳炎を起こします。子供で鼻水が多く熱が出て来て耳が痛いという場合はたいていこれです。カゼで鼻やノドに炎症がある時、強く鼻をかんだり、飛行機にのった時、ダイビングをした時も起こしやすいと言えます。耳管機能が悪い(滲出性中耳炎)小児では急性中耳炎になりやすい傾向があります。
多くの方に思われているような水泳や入浴の際に耳のあなから水が入って中耳炎になることはまずありませんが、もともと鼓膜に孔があいていれば可能性は高くなります。

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〈治療は?〉 

カゼの治療が必須です。
抗生剤(細菌を殺す薬)を使います。近年、薬が効きにくい細菌が増えており、また乳幼児に重症例が目立ち、入院のうえ抗生剤の点滴投与を必要とする場合もあります。
排膿・換気を目的に鼓膜切開を行います。抗生剤で効果がない、発熱がつづく、痛みが強い、全身状態が不良、合併症の危険性などが判断基準となります。また、全身状態が良好でも中耳腔に滲出液が長く残る場合(滲出性中耳炎)にも鼓膜切開を行ないます。

〈どんな合併症がありますか?〉

急性乳様突起炎:
頭蓋内合併症:
顔面神経麻痺:
頚部膿瘍:
耳後部の骨に炎症がおよび、耳の後ろが脹れます。
頭の中に炎症がおよびます。頭蓋内膿瘍など。
顔がまがります。
頚に炎症がおよびます。

〈注意してください〉

親が気づかないで中耳炎を起こしている場合が多くあります。乳幼児では、上気道炎やカゼの際には耳のチェックが必要となります。また、症状(耳痛など)と急性中耳炎の程度とは必ずしも並行しません。つまり、『痛みがおさまったから中耳炎は治った』とはけっして思わないでください。必ず医師に
治ったことを確認してもらい、自己判断で受診を中断しないでください。滲出性中耳炎で難聴を起こしたり、慢性中耳炎になることがあります。また、乳幼児では滲出性中耳炎になることも多く、完治まで長期間かかる場合もあります。
耳漏(みみだれ)は鼓膜の膨隆が強くなり、鼓膜が破裂(穿孔)するとみられますが、排膿によって耳痛は軽くなります。何度も中耳炎を繰り返していると鼓膜の穿孔が残存し、慢性中耳炎に移行することがあります。鼓膜が破れなければ耳だれは出ません。
痛みや発熱のある時にはできるだけ安静にして休むようにしてください。入浴も控えてください。耳鼻科の診察が必要ですが、夜間などで受診できない場合には痛み止めがあれば使ってもいいと思います。(ただし、痛みがなくなっても中耳炎が治ったわけではありません。)痛み止めでも耳痛が治まらない場合は鼓膜切開で軽快する場合が多く見られます。スイミングや運動は、医師の許可をもらって下さい。

〈院長からのひとこと;鼓膜切開の効果〉

鼓膜切開はとても有用な治療法だと考えています。『鼓膜切開した夜は静かに寝てくれました』と言われるおかあさん多くおられます。抗生剤のない時代に考案された非常にクラシカルな手法ですが、耐性菌が増えてきた今日こそ、その重要性は計り知れません。しかし、最近不思議に思うことがあります。それは熱です。『中耳炎で高熱は出ない。』というのが私の持論でした。『熱は上気道の炎症によるものであり、中耳炎はその結果であり原因ではない。』と考えていました。ましてや、鼓室内の膿が少量であったり滲出液の状態で39度前後の熱など出るはずがないと思っておりました。でも、けっこうあるんですよ、切開した夜にスッと熱が下がることが。私の息子もそうでした。急性乳様突起炎で全く熱のないこともあるのにどうしてでしょうね。

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