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耳の構造と機能


ここでは、耳の構造(つくり)と機能(はたらき)について勉強しましょう。
耳の病気を理解するには、その仕組みについて知ることも大切です。

まずは耳の構造についてお話します。
“みみ”といいますと通常、耳介・外耳道・鼓膜までは知られています。
しかし、その奥には図のように中耳・内耳があります。

耳の構造

〈耳の構造と機能〉

私たちは音をどこで聞いているんでしょう?
そう、耳ですね。上の図を見てください。これは耳の構造です。
私たち耳鼻科医は耳を、外耳(がいじ)・中耳(ちゅうじ)・内耳(ないじ)という3つの部位に分類して考えるようにしています。

[外耳]

音は空気の振動です。まず、耳介(じかい)は音波を集めます。外耳道は音波を中耳(ちゅうじ)に伝える部分です。外耳道はラッパの管のように音を増幅させる効果があります。音波は鼓膜(こまく;外耳の奥にあるうすい膜:下図参照)を振動させます。この鼓膜の振動が中耳に伝わります。
ちなみに耳介は皮膚と軟骨からできています。外耳道の外側の3分の1は耳介とつづく軟骨からできており、内側(奥)の3分の2は骨からできています。これは外耳炎と中耳炎の痛みの鑑別に有用です。外耳道軟骨部をおおう皮膚には、耳毛や汗腺の一種である耳垢腺があり異物が入るのを防いでいます。耳垢(みみあか)もお役に立っているんです。
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下の写真は正常の鼓膜所見です。
右鼓膜 左鼓膜
右鼓膜 左鼓膜

鼓膜は半透明も膜ですので、透けて中耳腔が観察できます。ここでは中耳腔になにも溜まっていませんので奥の壁が見えています。右鼓膜の2時・左鼓膜の10時にある線はツチ骨の付着部で、白いポッチは短突起(たんとっき)といって鼓膜の凹み具合を見る上で重要です。右鼓膜でいうと、2時から12時くらいの部分(透明感のあるところ)を緊張部といい、ピンと張ってる部分で、上部の少しくもって見えるところは弛緩部といって、ダルッとしています。この弛緩部がけっこう重要なんです。


[中耳]

鼓膜の奥には鼓室(こしつ)があり、鼓膜には3つの耳小骨(鼓膜に“ツチ骨”・次に“キヌタ骨”・最後に“アブミ骨”)がつながっています。鼓膜に音が当たって振動すると、鼓膜に付着している耳小骨を経由して内耳に伝わります。耳小骨は、てこの原理で鼓膜の振動を約3倍にして内耳に伝えます。増幅器の働きですね。

中耳は空洞になっていて、内腔は粘膜で裏打されています。聞こえという機能を保つために粘膜はとても重要な働きをしています。まず換気機能(空気の入れ替え)です。空気圧が適正な圧(鼓膜の内外が同じ圧)でないと、鼓膜がうまく振動しません。太鼓の中の空気を吸引してしまったら、太鼓の皮がペコンと凹んでしまい、うまく鳴りそうな気がしないでしょう。それから排泄機能です。粘膜は粘液を出し再吸収します。その時、細菌の死骸なども吸収します。細菌は感染を起こしますし、その死骸は毒素を出し、粘膜を傷害します。この分泌・吸収のバランスが崩れると中耳腔が水浸しになります。また、太鼓を想像してください。中に水を入れたら太鼓はうまく響くわけありませんよね。中耳粘膜の大切さをわかっていただけましたでしょうか。

中耳腔は耳管で鼻の奥(上咽頭)とつながっています。中耳の粘膜の喚起・排泄機能は長時間・持続的な働きですが、耳管は短時間・断続的な働きです。
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内耳]

内耳は聴覚(聞こえ)を担当する蝸牛(かぎゅう)と平衡感覚(バランス)をつかさどる前庭(卵形嚢・球形嚢・三半規管)からできています。グルグル・クニャクニャしていますので、迷路とも呼びます。英語ではラビリンス。神秘的でしょ。

蝸牛とは“かたつむり”のことで、その形から名前が来ています。蝸牛にはリンパ液が入っていて、耳小骨の振動でリンパ液が揺れ、その揺れを感覚細胞(有毛細胞)がとらえて電気信号に変え蝸牛神経に伝えます。神経は電気で伝わります。
有毛細胞は蝸牛の内側に並んでいて、その場所によって担当する周波数(音の高さ)が違います。つまり、それぞれの持ち場があるということです。

電気信号は、蝸牛神経を通って大脳に伝えられ、大脳皮質の聴覚をつかさどる部位がその信号を認知・処理した時『音が聞こえた』と認識し、それが何の音なのかを識別します。

さて、内耳には聞こえだけでなくバランスもつかさどっています。卵形嚢・球形嚢耳石系(先に石が載っている短い毛が密生しています)と呼ばれ、直線方向の動き・重力・遠心力を感知します。三半規管は回転運動を感知します。この信号は前庭神経に伝わります。センサーが過敏であればちょっとした頭位の変化を大げさにとらえてしまいグルグルまわりますし、鈍感であれば適切に頭位の変化を捉えることができずにバランスがとりにくくなってしまいます。また、前庭神経自体が傷害されても平衡障害をきたします。

蝸牛神経と前庭神経をあわせて、聴神経または内耳神経と呼び、8番目の脳神経です。平衡機能についてはまた別のページでお話いたします。

外耳・中耳・内耳のはたらきをわかっていただけたでしょうか?

ちなみに、外耳・中耳は音を振動としてキャッチしそれを伝えるはたらきをしますので、伝音系と呼びます。また、内耳は振動を電気信号に変換させるはたらきがあり、それを神経・脳へとつたえ音として感知・認識しますので感音系とよびます。

〈どうして聞こえなくなるのでしょう?〉

前述の経路の一箇所でも障害があれば、それ相応の聴力障害がでます。
耳が聞こえなくなる原因は様々です。

 [障害部位別]に考えるとだいたい次のように分けられます
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伝音性難聴: 外耳、中耳の障害による難聴

空気振動が十分に伝わらない状態になっており、耳垢栓塞・中耳の炎症・耳小骨の異常などで起こります。特徴としては、小さな音が聞こえにくいだけで、言葉の明瞭さにはあまり影響はあたえません。

感音性難聴: 内耳、聴神経、脳の障害による難聴

『音が聞こえにくい』だけでなく、音が歪んだり響いたり、言葉がはっきり聞こえません。治療に 反応する疾患は少ないのが現状です。
突発性難聴・メニエール病・騒音性難聴・老人性難聴・聴神経腫瘍など。

混合性難聴: 伝音性難聴と感音性難聴の両方の原因をもつ難聴

後迷路性難聴: 感音性難聴のうち特に蝸牛神経〜脳の障害による難聴


 [聴覚障害になった時期]により、以下のように分類されます

先天性聴覚障害: 生まれつき聞えに障害を持っている場合

言語獲得以前に聞こえの障害があるため、発音や会話が困難となります。
しかし、早くからの適切な教育によって言語の習得は可能で、読み書きは日常的にできるようになることが多いようです。

後天性聴覚障害: 生まれた後に障害を受けた場合

幼児期以降(言語獲得後)の病気や事故などによる聞こえの障害であり、明瞭な発音や言葉の理解に関しては問題が少ない。

老人性聴覚障害: 加齢変化に伴う難聴

感音性難聴に含まれます。内耳・聴神経だけでなく、加齢とともに鼓膜や耳小骨なども老化していきますので、障害が広範囲にわたることが特徴です。

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