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アレルギー性鼻炎・花粉症 | |
〈どんな病気でしょう?〉 アレルギー反応によってくしゃみ・鼻汁・鼻づまりが起こる疾患です。この病気は個々の体質に影響されます。身体の中に異物(抗原・アレルゲン)が入った時、それを排除しようと防御反応が起こり抗体というものが作られ、ふたたびアレルゲンが入ってくると強すぎる反応が起こり症状がでます。くしゃみと鼻汁は異物を追い出そうとする反応で、鼻づまりは異物を入れないようにする反応です。 ⇒ もうすこしだけ詳しく勉強してみましょう 是非とも読んでください ⇒発症の機序 |
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〈どんな症状が出るでしょう?〉 くしゃみ・鼻汁・鼻づまりが主で、眼のかゆみ・涙といった症状(アレルギー性結膜炎)やノドのかゆみ・浮腫(喉頭アレルギー)を起こすことがあります。鼻汁はふつう水のようですが、副鼻腔炎(蓄膿)を併発して粘稠で黄色い鼻汁になることもあります。 |
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〈原因は?〉 原因物質(アレルゲン)はハウスダスト(家のほこり)・ダニ・花粉・カビが主なものです。1年中症状のある通年性では家の中のハウスダスト・ダニが疑わしく、また、ペットや職場特有の物質も原因になることがあります。最近ではホルムアルデヒドが原因と言われるシックハウスシンドロームも注目されています。季節性のものでは花粉が最も考えられます。 |
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〈花粉症とはどうちがうのでしょうか?〉 花粉が原因でアレルギー反応が起こるものをとくに花粉症と呼んでいます。つまり、花粉症はアレルギー性鼻炎の一種と考えていただいていいかと思います。 季節性・地域性があるのが特徴です。スギであればスギ花粉症、ヒノキであればヒノキ花粉症と言います。5・6月であれば、イネ科のカモガヤ・オオアワガエリ、秋ごろにはヨモギ・ブタクサなどが多く見られます。スギ花粉があまりにも有名で花粉症といえばスギ花粉症と思われがちですが、いろんな花粉があることを覚えておいてください。 |
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〈診断方法は?〉 耳鼻咽喉科では問診と鼻の粘膜の性状(色や腫れ)でアレルギー性鼻炎であるかどうかは9割方わかりますし、原因物質も見当はつきます。しかし確定のために鼻汁の好酸球(白血球の一種)の数を調べたり、血液検査により原因物質の検索(RAST・MAST)を行うことがあります。 |
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〈治療は?〉 |
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1. | 抗原の除去・回避・生活管理が原則です。完全な除去・回避は不可能ですが、使用する薬の量を減らすことが可能になります。エアークリーナーも効果が期待できます(当院でも待合と診察室にクリーナー付換気扇を設置しています)。 |
2. | 抗アレルギー薬・抗ヒスタミン薬の内服、点鼻薬(ステロイドがお勧め)・点眼薬。花粉症であれば、花粉の飛散する2週間ほど前から内服すると軽症化が期待できます。症状が強く、コントロール不能であれば、1週間程度を限度として、内服のステロイド剤を考慮します。 |
3. | 温熱療法;蒸気(43℃が最適)などで鼻粘膜を温めます。薬剤を用いないので安全性が高く、妊婦さんにも使用できます。鼻だけではなくノドにも普段のケアーに最適だと思います。例えばインフルエンザウイルスは低温・乾燥で活発になり、高温・多湿で弱ります。 |
4. | 星状神経節ブロック;頚(気管のすぐ横)の交感神経節に局所麻酔薬を注射します。微小循環をよくし、鼻粘膜の代謝の改善や、免疫機能の正常化を促します。 |
5. | 薬で症状がとれない時には、手術も考慮します。レーザーや電気メスによる鼻粘膜の焼灼。鼻中隔弯曲があればその矯正術を行います。 |
6. | 特異的免疫療法(減感作療法);アレルギーの発症抗原を徐々に増やしながら注射します。要は慣れさせるということです。数年間の通院が必要で、効果が出るまでに数ヶ月を要します。また、アレルゲンが複数の場合は難しいことが多いようです。ただし、根治が期待できる(医者と縁が切れる)唯一の治療法と言えます。当院では行っておりません。滋賀医科大学耳鼻咽喉科に紹介致します。 詳しくはClick |
原因が人体の免疫反応という生命維持に不可欠の機能にあるので、治療も一筋縄では行きません。現在のところ根治が難しいので症状の増悪を抑える治療が中心になります。 |
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〈薬はいつまで飲みましょう?〉 花粉症のように季節性のものであれば、その季節が終わるまでは続けていただいたほうがいいでしょう。通年性であれば症状と相談ということになります。症状が強いときには薬でコントロールし、症状が軽ければ1回量ないしは回数を減らすようにしてはいかがでしょうか。例えば、1日2回の薬を1回にしてみて、調子がよければやめてみる。症状が出るようであれば薬を再開する。ただし、数日分のお薬を残して休薬されることをお勧めします。 なによりも年間を通して、ご自分の症状の出方の推移と、どの薬と相性(効果と眠気といった副作用とのバランス)が良かったかを把握していただくことが大事だと思います。高い血液検査よりずっと有益だと思います。 |
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〈こんな患者さん、けっこう多いです。〉 椅子に座るなり、『花粉症になりました。』とか『アレルギー性鼻炎の症状がでました。』とだけおっしゃられる方がおられます。「鼻水は?くしゃみは?鼻づまりは?目はかゆくないですか?」とか「どの症状が強いですか?」などと尋ねますと、面倒くさそうな顔をされることもあります。でも、薬にはけっこう得意・不得意の分野があって、薬を選ぶ時の基準として、どういった症状が強くて問題になっているのかが結構大事です。また、薬によって眠気が出やすいかどうかも重要です。特に車の運転をされる方や受験生にとっては・・・。それから、今までで、『この薬が良かった』というものがあれば教えていただきたいです。『ほら、これくらいの白い錠剤』と言って、指で丸を作られても困ってしまいます。他の疾患でもそうなのですが、ご自分の飲んでおられる、もしくは飲んでおられた薬はできるだけ把握しておきましょう。 |
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〈ご注意を!〉 |
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点鼻薬のなかには血管収縮薬が入っているものがあり、鼻閉によく効きます。特に市販品に多く見られ、『市販の点鼻薬を使ってました。』と言われるのはまずこれです。血管収縮薬は読んで字の如く鼻粘膜の血管を縮めて粘膜の体積を小さくしますので鼻腔の容積が増えて劇的に鼻の通りが良くなります。しかし、連用によって反応が少しづつ悪くなるのと、反応性にかえって鼻粘膜が肥厚してきます。薬剤性鼻炎といえます。最初は1日に1回程度で過ごせたものが2回・3回と増えてきて、リビングに1個、キッチンに1個、寝室に1個、ハンドバッグやポケットに1個、職場に1個などなど、常時4〜5個用意しておかないと我慢できない状態で、これがないと不安で外出もできないと言う方もおられます。かくいう私も以前このような状態で苦労いたしました。血管収縮薬の点鼻薬は1週間、できれば4〜5日を限度にしていただくほうが良いと思います。こういう方はある種の抗アレルギー薬とステロイドの点鼻薬で、うまくいけば1〜2週間で血管収縮薬をやめることも可能ですし、だめなら前述のような手術的な方法もありますので、是非とも耳鼻咽喉科で相談してください。 『これ一発で花粉症が治る』と信じられている筋肉注射のほとんどは長時間作用型のステロイド剤です。賛否両論ありますが、少なくともほとんどの耳鼻咽喉科医・アレルギーの専門医が否定的な意見であると思います。私も以前、患者さんにせがまれて投与したことがありますが、やりたくない治療のひとつです。 |
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〈発症の機序〉 |
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暴露 | 体内に異物(花粉・ダニ・ハウスダスト等)が侵入します。つまり異物に鼻の粘膜・眼の結膜・咽喉頭の粘膜が曝されることになります。 |
⇒また異物が侵入してきたら困ります。そこで… |
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感作 | 次の侵入に備えて防御機構を構築します。防御物質としてその異物に特異的な抗体“IgE抗体”が産生されます。 このIgE抗体が粘膜などに存在する“肥満細胞”にくっ付きます。 |
⇒これで準備OK! 『かかってきなさい。』と言いたい所ですが… |
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発症 | 困ったことに感作された人のうち過剰な防御反応がでることがあります。 |
さて、なぜ症状が現れるのでしょう? ⇒ IgE抗体が付着した肥満細胞はある程度の量までならいいのですが、 限度を超えますとアレルギー反応(下記)が起こります。 |
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つまり、再び異物(これを“抗原”と呼びます)が侵入すると、『自由にさせじ』とIgE抗体が抗原を捕まえます。これを“抗原抗体反応”といいます。すると抗体が付着している肥満細胞が活性化されて化学伝達物質(ヒスタミン・ロイコトリエン等)が遊離(放出)されます。この化学伝達物質(ケミカルメディエイター)標的組織を刺激して起こる好ましくない反応が鼻アレルギーです。 ヒスタミンは知覚神経(三叉神経)を刺激し、くしゃみ反射をひき起こします。その刺激は副交感神経に伝わりアセチルコリンが分泌されて鼻腺(分泌腺)や血管に作用します。鼻腺が刺激され鼻水が出ます。 いっぽうロイコトリエンはヒスタミンとともに血管に作用して血管の透過性亢進(液体が滲み出やすくなる)や静脈叢での血管拡張・血流うっ滞が起きます。このような局所の循環障害・浮腫・分泌過多・腺の腫大などによる粘膜の腫脹(体積の増加)により鼻づまりを起こします。 |
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〈特異的免疫療法(減感作療法)について説明いたします。〉 |
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1. | 特異的免疫療法とは何でしょう? |
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アレルギー性鼻炎の治療法の一つです。 | ||||||
2. | どんな効果が期待できますか? | |||||
症状の改善・発症予防・使用薬の節減・症状の長期寛解 といった効果が望めます。 症状の消失・改善率は約70%程度と考えられています。 全く効果がない場合は約30%あります。 |
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3. | どんなアレルギーにも効きますか? |
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現在使用できるワクチンは『スギ花粉』と『ハウスダスト』だけです。 |
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4. | どのような方法で行うのでしょう? | |||||
スケジュールに沿って、『ハウスダスト』または『スギ』のワクチンを上腕伸側(二の腕の伸ばす側)に皮下注射します。スケジュールは各個人の検査結果によって異なります。 |
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治療開始後は年に1〜2回程度の再検査を行います。 10ヶ月程度は週一回の通院が必要で、最低2年程度の治療が必要です。 |
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5. | 注意することは? |
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アレルギーの原因となるエキスを注射しますので、注射の間隔をあけたり、急に量(または濃度)を増やすことはできません。予定の間隔があくと、計画が遅れたり、または最初からやり直しになることもあります。免疫療法開始後全く効果がなくても半年から一年はつづけていただきます。 注射の部位は決して揉まないでください。ワクチンが早くまわってしまい、効果が薄くなるとともに、副反応が出やすくなります。 注射当日は激しい運動は控えてください。注射の部位は少し腫れることがあります。 高血圧のある方で、βブロッカーという種類の薬を使用されている方は、万一副作用が起きた際に使用する薬剤を使えませんのでこの治療をすることができません。 妊娠された方も維持期では継続も可能です。(増量期はあまり好ましくありません) かぜ症状、喘息発作時(特に喘息の持病がある方)には注射を延期することがあります。 |
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6. | 合併症や危険性はないのでしょうか? |
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アレルギーの原因となる物質を注射しますので、ほとんどの場合、注射した部位は、赤くなったり腫れたりします。注射部位の多少の腫脹、発赤、掻痒感、咳などは薬などで対応できます。反応が強い場合には、途中で治療計画を変更することがあります。まれに全身の蕁麻疹・発赤、喘息症状、呼吸困難など全身の強い副作用が起こることがあります。症状によっては1〜2日程度の入院が必要になる場合があります。副反応は注射後30分以内(特に15分以内)に起こりやすいので、注射後30分以内は院外に出ないでください。 |
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7. | こんな症例がありました。 | |||||
中学1年生 結構きついアレルギー性鼻炎でした。メインはハウスダストですが、その他諸々、いろんなアレルゲンがありました。いつ見ても、鼻粘膜は蒼白で水様性鼻汁があり、鼻では呼吸が出来ない状態でした。いろんな薬を変更・追加しながら治療しましたが、症状・所見とも改善は見られませんでした。(もちろん内服中) そこで、高校受験のタイミングも考え、小学6年生時に滋賀医科大学耳鼻咽喉科にて特異的免疫療法を開始してもらいました。 ここ半年ほど来院がなかったので、小学校の健診で妹さんに会った時、具合を聞いてみると 『いいみたい。』という嬉しくもカワイイ返事を戴き、中学校の健診を楽しみにしていました。 『どうぉ?』と聞くと 『注射のとこが腫れるけど、すっごくイイ感じ!』とのこと。 見てみると。これがまぁ、きれい。『うぉ!すごい。』と唸ってしまいました。 恐るべし!特異的免疫療法。 |
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