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イビキ・睡眠時無呼吸 | |
睡眠時無呼吸症は寝ている間に呼吸が止まることですが ちょっと唐突すぎますので、まずはイビキからお話します。 |
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私の話も結構イケテルと思っているのですが、無呼吸に限らず睡眠についてのことを知りたい方は滋賀医科大学睡眠学講座のHPに入ってみてください。 面白いですよ。 |
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〈イビキとは?〉 いびきは他人に迷惑をかけますが、イビキを自覚することは極まれで、家族や同僚から「うるさくて眠れない」「寝る部屋は別」などの指摘を受けることがほとんどだと思います。 イビキは寝ている間に起こる異常な呼吸音で、空気の通りが悪くて発生します。イビキをかいていると一見熟睡しているように見えますが、実際には呼吸が抑制され、眠りが浅く、睡眠時間の割にはじゅうぶんに眠れていないことがほとんどです。一時的な軽いいびき程度であればそれほど問題にはならないと思いますが、毎晩イビキをかいたり「呼吸が止まっている」などというときには注意が必要です。 イビキは他人に迷惑をかけているばかりではありません。イビキをかき、しかも呼吸が抑制され熟睡していないとなれば、日中の眠気、集中力・活力・記憶力の低下、精神不安定でイライラしたりするようになります。さらに「呼吸が止まっている」ことがあれば体内の酸素不足がおこり、循環器系や呼吸器系に影響を与えやがては身体に様々な障害が出てくると考えられます。 |
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普通のいびき・・・規則的ないびきで、無呼吸はありません 病的ないびき・・・いびきの合間に静かになり、無呼吸が生じています |
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〈イビキの原因は?〉 イビキとは睡眠時に呼吸の気流によって生じる粘膜の振動音です。気道(空気の通り道)が狭くなっておこります。睡眠中はノドや舌の筋肉がゆるむので、気道に落ち込み、狭くなり、空気がスムーズに流れなくなってノドの粘膜を振動させイビキが発生します。 原因としては肥満・アデノイド(上咽頭:鼻の奥)・扁桃肥大・口蓋弓の形態・舌の肥大・鼻疾患・あごの骨の発育不全・アルコール・薬物などがあります。 |
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右図はイビキの発生メカニズムです イビキは鼻咽腔の空気の通り道が狭くなり 粘膜が振動します。 |
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〈いびき対策:日常生活〉 | |
睡眠姿勢 | |
1.横向きに寝る: 2.枕を低くする: |
横向きに眠ることにより、舌の落ち込みを防止します。 枕を高くすると首が曲り気道も曲ります。枕を低くしたり首に枕をあててあごを突き出すようにすると気道がまっすぐになり空気の通りがよくなります。 |
減量 体重の増加であごや首まわりが太くなり、気道を圧迫し睡眠時に気道が狭くなっている可能性があります。減量することでいびきはかなり減少します。何よりもまずこれが最も安全確実で、しかも他の生活習慣病にとっても重要です。 |
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睡眠時無呼吸症 |
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〈睡眠時無呼吸症候群とは?〉 睡眠時無呼吸症候群は、最近テレビや雑誌で紹介されているため認知度は上がってきていますが、イビキ同様、ご自身で気づかれて来院することはまずありません。また、最初から家人などに「呼吸が止まっている」と指摘されることも少ないようです。通常は「イビキがうるさいと文句を言われます。」との訴えがもっとも多いようです。 眠りが深くなってくると呼吸が止まりやすくなり、血中酸素濃度が低下し、呼吸をうながすために眠りを浅くします。酸素濃度が上がってくるとまた眠りが深くなり呼吸が止まるというサイクルを一晩中繰り返すことになり、睡眠不足がおこります。また酸素不足のためより多くの酸素を送る為、心臓はせっせと活動します。つまり寝ている間も運動しているようなもので、循環器系に慢性的な負担をかけることになります。 いびきのあとに呼吸が止まるようなときには無呼吸症を疑い、正しい診断と治療が必要です。 |
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右図は睡眠時無呼吸の発生メカニズムです 空気の通り道がイビキの時より狭くなり 完全に塞がってしまうと呼吸がとまります |
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睡眠時無呼吸症候群の定義 一晩(7時間)の睡眠中に10秒以上の無呼吸が30回以上おこる。 または、睡眠1時間あたりの無呼吸数や低呼吸数が10回以上おこる。 |
無呼吸の定義 10秒以上にわたって呼吸が行われない状態。 |
低呼吸の定義 1回の換気量が通常の4分の1になるもの。 動脈中の酸素濃度が4%以上低下するもの。 胸腹部の呼吸運動が50%以上減弱するもの。 |
〈睡眠時無呼吸症候群の症状は?〉 |
1. 無呼吸(あたりまえですが・・・) 本人は自覚しないが時に窒息感で目を覚ますことがあります 2. イビキ イビキが静かになり息が止まり、また再開します 甲高い音のイビキは要注意 3. 昼間眠気が強い 会議や授業中寝てしまう;気合が入ってないと思われてしまいます 居眠り運転をする;これは文句なしに危険です 集中力が落ち、やる気がでない;学業・仕事に影響します 4. 睡眠中、起きてしまう 排尿や息が苦しくて 5. インポテンツ(・・・・・・) 6. 朝起きたとき、口が渇く 口を開けて寝ることが多いようです。 7. 朝起きたとき、頭痛があり、頭がすっきりしない 喚起不良は血中二酸化炭素濃度をあげ、頭蓋内の血管を拡張させます 8. 精神症状 疲れやすい・無頓着・活動性の低下・怒りっぽい・記憶力の低下など |
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1. 肥満 約7割の患者さんに肥満があります 逆に言うと肥満がなくても無呼吸になることがあります 2. アゴが小さく横から見ると平ら アジア人は顔の形態により無呼吸を起こしやすいと言われています 3. 軟口蓋(後口蓋弓)の低位 口蓋垂(ノドチンコ)の両脇の粘膜が低く垂れ下がっている 4. 扁桃肥大 ノドの両側にあり、大きいとやはりノドを狭くします 5. 舌肥大 口を開けたとき舌が盛り上がっていて口蓋垂が十分に見えない人は要注意 |
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上図は正常の方のノドです ノドが広く口蓋垂が十分に見える方は まず大丈夫です |
上図は無呼吸患者さんのノドです ノドが狭く、舌が盛り上がり 口蓋垂が見にくい方は要注意 |
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ご自分あるいはだんな様、奥様をチェックしてみてください。 当てはまる項目の多い方は睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。 相談に来てください。 |
〈睡眠時無呼吸症候群はなぜ治療が必要なのでしょう?〉 無呼吸のため十分に睡眠がとれず、日中の眠気、集中力、活力に欠け、重要な会議中に居眠りしてしまうなどの悪影響がでます。会議の居眠りでは直接人命に関わりませんが、居眠り運転の危険性は明らかです。睡眠時無呼吸症の方は4倍も交通事故を起こしやすいとも言われており、スリーマイル島原発事故、スペースシャトルチャレンジャー号爆発事故、アラスカ沖大型タンカー座礁事故、チェルノブイリ原発事故などは、睡眠障害が原因となった事故として知られていますし、働き盛りの人の死亡、仕事の能率低下などでも注目されています。先般、アメリカ合衆国では睡眠障害による経済損失は年間700億ドルに及ぶと試算されました。原発事故などはかなり長期間の医学・経済・環境の問題が残ります。 また、高血圧・脳梗塞・狭心症・心筋梗塞・脳梗塞などを合併することが多く突然死の可能性も指摘されています。睡眠時無呼吸症では、無呼吸からの呼吸再開の度に20mmHG程度の血圧上昇が見られます。 集中力の低下は学業の悪化や仕事の能率低下、さらに、小児の場合には身体・精神ともに成長障害を引き起こすことがあります。 |
〈小児の特徴〉 小児の睡眠時無呼吸症は成人とちょっと違っています。症状としては、成人で多い昼間の眠気や居眠りよりも、多動・落ち着きが無い・不機嫌などが特徴的でADHD(児童期の注意力散漫と多動を特徴とする症候群)と似ており、間違われることがあります。また、成長ホルモン(GH)にも関与します。睡眠時無呼吸による睡眠周期の乱れによりGHの分泌が悪くなり発育の遅れをきたします。 |
上図は正常睡眠パターン 周期的に深い睡眠が得られています |
上図は無呼吸睡眠パターン 睡眠周期が乱れ深い睡眠がありません 同じ睡眠時間でも睡眠の質は低下しています |
〈どんな検査が必要ですか?〉 | TOPへ |
問診 寝ている間の様子を(家人より)聞きます。可能であればビデオ(VHS・SVHS・Hi8なら可)で睡眠の状態を撮っておいていただけると非常に有用です。その他、〈症状〉の項目について伺います。 |
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身体所見 肥っていて首が太くて短い、顎が小さい、扁桃が大きい、後口蓋弓が低い、といった特徴があります。 |
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検査 終夜睡眠時ポリグラフィー(PSG)がもっとも信頼性があり、治療法の選択のためにも有用な検査です。しかし入院が必要なこともあり、患者さんの時間・経済的な負担を考慮すると、疑いのあるすべての方にPSGを行うことはちょっと考え物です。 当院ではまず、自宅でやっていただける簡単な検査として、簡易型睡眠時呼吸モニター行なっていただいております。夜間睡眠時の動脈中の酸素濃度(経皮的動脈酸素飽和度)と心拍数を測定しています。これで大体の傾向はつかめます。酸素濃度の低下が強い時は無呼吸が確実あると考えられますので治療法の選択のためにもPSGを行います。酸素濃度の低下がほとんどなく、問診・身体所見ともリスクが低ければ経過観察とします。リスクが高そうであれば、睡眠を浅くして酸素濃度を保っている可能性もあるためPSGを行います。 |
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治療 1. 軽症では歯科装具 2. 中等症では手術(UPPP)またはNCPAP 3. 重症ではNCPAPまたはNCPAPプラス手術 いずれにしても、減量は必要です。 一般的指導として、側臥位睡眠・減量指導を行います。その上でNCPAP療法が中心となります。耳鼻科的手術UPPPも行われます。薬物療法は確立されたものではありません。 |
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〈院長からのひとこと〉 治療が必要な理由は前述しました。なによりも患者さんに病識がないことが問題です。それは、まず無呼吸が起きていることが実感できないこと、症状が無呼吸によって起こっていることが認識できないこと、合併症が無呼吸により増悪することが認識できないことによると思います。 高血圧症との関連を調べた興味深い実験があります。 イヌに気管切開(気管に孔を開ける)を設け睡眠中に気道を間歇的に閉鎖して睡眠時無呼吸のモデルとした実験です。睡眠中だけではなく覚醒中にも高血圧をきたすようになります。気道の閉鎖をやめると血圧が正常に戻ります。これは交感神経の興奮が続くためと考えられています。 結局、寝ているときも起きているときと同じような活動をしているようなものです。しんどいことです。 なお、一連の検査・治療(手術も)は保険が利きます。 |
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〈言葉の説明〉 終夜睡眠時ポリグラフィー(PSG) PSGは入院が必要なため高次医療機関(病診連携:社会保険滋賀病院耳鼻咽喉科)に依頼しています。PSGは動脈中の酸素濃度と心拍数、鼻・口の呼吸気流、胸腹部の呼吸運動、脳波、眼球運動などを測定するので単に呼吸をしているかどうかだけではなく、睡眠の深度や周期までがわかります。また睡眠時無呼吸の患者さんは呼吸器・循環器系疾患の合併のリスクも高いのであわせて精査してもらっています。また、下記のNCPAPの効果をみるため器械を装着してPSGを行いたいので、原則として2泊3日の入院になります。 |
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経皮的動脈酸素飽和度 指先にセンサーを装着し動脈中の酸素濃度(SpO2)心拍数を測定し、一晩のデータを記録、解析します。ちなみに、SpO2の明らかな低下が見られるためには、30秒〜1分以上の呼吸停止が必要です。また、無呼吸の基準となっている10秒程度の呼吸停止を2回の呼吸をはさんで30〜40回程度行ってもSpO2の低下はほとんどありません。逆に言うと、SpO2の低下のある場合はかなりの無呼吸が予測されます。 |
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歯科装具 下顎を前方に固定する歯科装具で効果がある例もある。 |
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NCPAP:経鼻持続陽圧呼吸装置 自然な呼吸では肺・気管の陰圧で吸気を行ないます。睡眠時無呼吸症の患者では吸気時の僅かな陰圧でも容易に粘膜が引き込まれ上気道が閉塞します。鼻から上気道に空気を送り込んで上気道を陽圧に保ち、この閉塞を防ぐ目的で考案されたのがNCPAP(経鼻持続陽圧呼吸装置)です。NCPAPは現在治療の主流となっており、保険適応となってから普及してきました。NCPAPの問題点としては、装着の煩わしさがあります。しかし患者さんのモチベーションで解決できることです。しかし、NCPAPをいつまで続けるかという問題は解決できないのが現状です。 |
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右図:NCPAPは鼻マスクから陽圧をかけること でノドを拡げます |
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UPPP:口蓋咽頭形成術 手術適応の患者さんにはUPPPを勧めます。扁桃摘出後、口蓋弓・口蓋垂をトリミングして中咽頭腔を拡大します。以前はNCPAPに保険適応がなく、器械が30〜40万円程度するため、無呼吸の程度がどうであれ手術しか方法はありませんでした。手術単独で改善するタイプ(中等症で扁桃が大きい方に最適)であれば、NCPAPのようなマスクをする煩わしさがありません。高度なものに対しては手術単独での完治は難しいのではないでしょうか。しかし、NCPAPを併用するにしても設定圧を下げることができますので、使用感はよくなると思います。 |